取扱事件と必要な手続についての説明です。
相続関係の取扱事件
遺言書,遺言書検認,遺留分放棄,相続放棄,限定承認,遺産分割,遺留分減殺請求,預金払戻・解約手続,不動産登記手続,遺産分割後の法定果実の請求など
必要な手続わからない方,以下,説明します
遺産の範囲に争いがある事件
遺産の範囲に争いがある事件とは,亡くなった方被相続人の所有物かどうかわからない財産がある時に,それが遺産か遺産でないかわからないケースです。具体的には,父が将来子供のために使おうと子供名義にしていた預金があるケース。この場合,子供の名義を借りた父の預金か父が子供に贈与したものかはっきりしない。また,父が自分が亡くなった時に相続税を低く抑えようと不動産を子供名義としていたケース。この場合も子供の名義を借りた父の預金か父が子供に贈与したものかはっきりしない。さらに,子供名義になっているが,父がお金を出したのではないかと疑われるケース。この最後のケースでは子供がお金を出した場合,父がお金を出したが贈与である場合,父がお金を出して財産を子供の名義とした場合がある。初めの場合は遺産でないとして取り扱われる。2番目の場合も遺産としては取り扱われないが,特別受益と言って,遺産分割で考慮されることがある。3番目は遺産として取り扱われる。
遺産の範囲に争いがある事件では,協議や調停で解決するか地方裁判所で問題となっている遺産について判決をもらうことになる。遺産分割の調停が始まったが,遺産の範囲に争いがあることになると,争いのある財産を除外して遺産分割を勧めざるを得ない。
遺産の分け方,つまり遺産分割について争いがある事件
遺産分割について争いがある事件では,家庭裁判所に遺産分割の「調停」を申し立てる。調停は話し合いの手続きだ。話し合いで解決しないと調停終了時に家事審判の申立てがあったものとして取り扱われ,「審判」手続きで決着する。
遺言があり,他の相続人に相続させるという内容の事件
遺言は全てその内容が実現されるのではなく,遺留分の限度で効力が制限される。遺留分とは被相続人の財産の中で,法律上その取得が一定の相続人に留保されていて,被相続人による自由な処分(贈与・遺贈)に対して制限が加えられている持分的利益をいう(潮見佳男相続法,弘文堂,2014.3)。遺留分を主張するには,遺留分減殺(げんさい)請求権を行使する。問題は遺留分減殺請求権行使後の権利関係処理で,通常は調停申立てだろう。
遺産中の普通預金の払い戻しを請求する事件
遺言書がある場合は,遺産分割方法は遺言書にしたがうわけであるが,遺言書がない場合は,遺産分割が必要である。しかし,遺産の中でも遺産分割の対象となる財産と遺産分割の対象とはならない財産がある。
判例では,普通預金は遺産分割の対象とはならず,相続時点で,法定相続分に応じて,各相続人に帰属するものとされている。ところが,銀行実務では遺産である預金の解約・払戻には相続人全員の署名捺印を求めている。相続人全員で協力して手続きできれば良いが,それができない場合,すみやかに預金を払い戻したい相続人は遺産である預金の払い戻しを金融機関に請求することになる。簡易裁判所あるいは地方裁判所に訴訟を提起する。
相続による不動産登記
相続開始後遺産分割までの収益・費用の清算
遺産分割が終わったら,全部終了と思っていませんか?
相続開始後遺産分割までの収益・費用は別清算です。
特に審判で終わった場合など,未精算の場合がありますが,結構な金額になります。通常は不当利得返還の訴訟で対処します。
その他
遺言書の有効性を争う場合
相続人であるかどうかを争う場合
本来,相続の問題とは少し違うが,墓や遺骨に関して争う場合
などがあります。